走る稲光、小型のくせにあの目のないナメクジのような化物は手ごわかった。歌姫の防具を二種類、身につけ、弓を引き絞る顔は無表情だった。その矢は化物に飛ぶときもあれば、総裁たちにも飛んでいた。片手剣を操るジョンは総裁に飛ぶ矢を払ったりもしたが、無駄なときもあった。
「うわっ」
「殿下」
「構うな、トマス、やつを」
「はい」
振るう太刀。繰り出すトンファー。矢が光り、空へとかけのぼる。いつの間にそんな射方を覚えたのだろう、そう思う。いつも持っている弓矢とは違い、星と雪形がついたものだった。そうか、あの弓矢が、別の射方を導いているのだろう。が、それがたまに総裁目掛けて飛んでくる。トマスが既の所で切り落とした。そしてその合間にも雷が走る。それを避けながら攻撃を加え続けた。モンスターがふわりと飛び上がり、姿を消した。
「エリア移動かっ」
「その様子ですね」
リッチー君が駆け寄って告げた。
「隣のエリアに行ったみたいです。でも、他のハンターの連絡からでは、穴蔵の方で待機したほうがいいと聞いてます」
「よし、穴蔵の方に行こう」
雪山だった。雪山の奥に洞窟があるらしい。その洞窟自体も凍りついていた。その穴蔵の奥深くに傷ついたモンスターは向かったらしい。全員で駆けつける。そこで待ち構える。
「殿下、僕…」
「わかってる、ジョン、頼む」
「はい」
身体の自由が効かないらしい。そう告げてきた。
「あのカボチャが…」
かくんと膝をおり、リッチー君がうずくまる。そこにあの化物が降りてきた。羽毛はないが、羽根があるのだ、ただ長く飛び続けるのは苦手らしい。稲光がする。うずくまっていた子供がやっとの思いで矢を一つ、放った。ひるんだ化物を殴り、切り伏せ、倒した。
「手こずったな、仕方ないか」
穴蔵の底から出てきた箱はいつものものよりかなり大きかった。狩りの様子を見ていたらしい竜族の大柄な男たちがやってきた。
「運びますぜ、部屋に戻ってくだせえ」
「助かる、頼む」
ふと見ると、リッチー君が弓でジョンに殴りかかっていた。
「操られている、何かありませんかっ」
避けながらジョンが叫ぶ。
「仕方ない」
トンファーを総裁は構えた。
「ごめんね、リッチー君」
出力を最弱にして殴った。吹っ飛んだ子供は気を失っていた。
「後味が悪いな、まったく」
そう言う総裁の横でトマスが子供を抱え上げていた。
「戻りましょう、殿下」
「ああ」
歌姫に二部だけでは効かなかったと報告すると、彼女は歌姫のような防具を強化し、歌唱の石と呼ばれる石を防具に組み込ませていた。
「これを使ってください」
「はい」
「苦痛はありますが」
「承知しております」
苦い言葉をトマスが口にしていた。


目覚めたリッチー君が口を開いた。
「またやっちゃったんですか、僕」
「…君のせいじゃない」
「僕が弱いから」
「そこじゃない…たまたま、やつが君を選んだだけだ。私だったかも知れない、それだけだ」
「殿下」
「それでも、狩りには来てもらうぞ」
「はい」
乾いている、口が、喉が。あらゆるところが。潤いが消えていく、そんな感じがした。
「次の狩りはなんだろう、な」
総裁はそうつぶやき、部屋にある泡盛の材料を見渡した。これでも足りないというのか。
「大蛇退治ですからね」
トマスがそう言う。
「大蛇…」
「酒樽が二十個くらい必要らしいですよ…」
「泡盛が二十樽…」
「一度、見たことありますから、あれと変わらないのではないかと」
「あーあれ…」
確かに一瓶では効かない。大きな、人間三人が一度に入浴できそうな程の大きさの樽一個でも間に合わないだろう、あの大蛇を泥酔させるには。
「そんな量、作れるのか」
まずは一瓶だけでもいいから作ってみるか、と総裁は思った。猫や竜人族たちが集めた瓶に麹をまぶし、発酵させた酒米、水をいれ、撹拌することにした。温度調整は猫達がしている。
「何日か経てば、どぶろくが出来ますよ」
レオンがそう言った。
「それをどうするというのだ」
「袋に入れて絞ります」
「ソレまではまた狩りだな」
「他にも作業ありますからね、殿下」
「わかった」
何に使うのか解らない器具がある。下で温め、蒸気を集める機能になっている。
「これは」
「蒸留マシンですよ」
「これが…そうか、なるほどな」


炎のドラゴン。それも発展系。それが次の狩り。




続く。