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      リース夫人が苦笑する。
       「一週間だから」
      そうは言ってもむくれている息子に何と言ったらいいのやら。
       「白薔薇亭に行くのはちょっといやだ」
       「ちょっとって・・・」
       「兄上が」
       「ああ、そうね・・・」
      まったくどうしよーもない過保護ぶりには、リース夫妻もあきれるほどだが。大学に行っては追いかけ回し・・・本人いわく護衛なのだそうだが。
       「仕方ないのよ」
       「病院」
       「調子がいいのに、無茶言わないの」
       「だって・・・」
      ごねまくってごねまくっていたが、仕方なく、リース夫人の息子は白薔薇亭へやってきた。着替えを抱えて。
       「うっわ、すっごい顔」
       「無理でしょ」
      あっけらからんとアンが言う。
       「なんで」
       「兄上様がおっかけまわすからに決まっているじゃない」
      ネヴィル料理長の娘さんはこちらに来たらやけにたくましい。まさか、こんなにお父さん似とは夢にも思わなかった・・・。
       「予想できたけどねー、アン」
       「うふふふ」
      この夫婦は。
       「つまり・・・一応」
       「国王陛下だから我慢してただけよ」
      どきっぱり。さすが・・・カエルを捌くだけはある。
       「そう言えば・・・」
       「あ、いけない。ドジョウとウナギ、捌かなきゃ・・・」
       「え」
       「何か・・・」
      オーナーさんはそう言った。
       「だから、この間兄上がのびたおっきいカエルならアンが捌いてグリーンカレーに・・・」
       「・・・・・・嘘だろ」
       「嘘じゃないもん」
      ・・・。・・・。ネヴィルの娘って。
       「母上もそのくらい出来るんじゃないの」
       「嘘」
       「兄上、女に夢見過ぎ」
       「そんなもんか」
       「あーそれで振られるんだ、よっくわかった」
       「おまえ、やっぱり俺を何だと思ってるんだよ」
       「聞きたいの」
       「いや、いい・・・」
      聞きたくない。どーせ碌な事言わないのに決まっている。


      大学の図書室に行ったと聞いた。エドワードはそれで大学に行ってみた。
       「図書館で崩落事故があったらしい」
       「図書館、だと」
      図書館のまわりには係員がいて非常線を張っていた。
       「中の様子は」
       「図書館員が二人、大学生三人が巻き込まれた」
       「氏名は」
       「これから発表になるとか」
      あの子がいなければよいが、とエドワードは思った。その先の道。
       「アイク」
      リチャードのクラスメートだが、体格がよく、年齢も大学生として通常の年頃の青年がいた。
       「ああ、知らせようと思ったんだ、ただ、アンタの連絡先が解らなくて・・・地下室に閉じ込められたんだ、アンタの弟さんとマイク、それにジュリアだ。図書館員の方はまだ解らない」
       「弟・・・」
       「リチャード・リースだよ、連絡ツールに寄れば全員生存している。学生は。図書館員は一人駄目だった」
       「駄目」
       「重機を入れられないんだ、いる場所がちょっと・・・ボランティアを募ってくる。手作業でがれきを取り除く他ない」
       「解った、私もやろう」
       「この先だ」
       「解った」
      学生や警備関係の人間ががれきを取り除いていた、手仕事で。


       「大丈夫ですか」
       「君の話し方は中世の」
       「あなたの話し方もそうですよ、そうだ、トマス殿にも似ている気がする」
      暗闇の中、少年の声が聞こえる。
       「トマス・・・」
       「ええ、宇宙軍の総裁閣下の副官の」
       「ああ・・・彼ね」
       「ご存じなのですか」
       「・・・以前ね」
       「そうですか・・・水音、しませんか」
      耳を澄ます。
       「するね」
       「ありました、これ・・・上水道の管です、少しずつしみ出ているみたい・・・これでなんとか持ちますよ」
       「ホントか」
       「ええ、お身体動かせますか」
       「いや、脚が挟まっている・・・」
       「そうですか・・・」
      ポケットからハンカチを探り出すとそれを管に押しあてる。
       「どうぞ」
      手渡されたハンカチを口元にあて、水分を取った。
       「どの辺か解りますか」
       「いや、新任なので、全然検討がつかない」
       「外の人には解っていると思いますけど」
       「そうか・・・」
      少年は黙ってしまった。彼も口を閉ざした。水、と伝えるだけにした。体力温存を図る為だ。


       「今日はここまでですね」
       「もう少し・・・」
       「駄目です。人数が限られているんです。交代しましょう、気持ちはわかりますが、あなたが無事でなければ、中の彼が・・・」
       「そうだな・・・」
      泥だらけの手を見て、立ち上がる。
       「三日以内に探し出せ」
      集まった人達の声がした。エドワードはアイクと一緒にボランティアセンターへ向かった。
       「手を洗って食事を取って下さい」
      頷き、手を洗うと水がしみた。ふと見ると爪が割れて出血が見えた。
       「手当いたしましょう」
       「頼みます」
      心配でたまらないが、ふと気付いてアイクに声をかけた。
       「リース夫妻は」
       「ここに戻るのには・・・五日ほどかかるそうです」
       「解った・・・それでは・・・あの子の保護者は私だな・・・」
       「そうなりますね」

       「来て下さい、保護者、家族の方に連絡があります」
      翌日の事だった。
       「ジュリアを発見し、病院に収容しました。マイクは今、救助中です。ただ・・・リースくんと図書館員のジョン・ヴィアー氏の位置確定に手間取っています・・・」
       「手間取っている・・・?」
       「はい。電波発信の場所を探査しましたが、リース君のタブレットのみ発見、本人の位置がつかめません。その場所からどこかに移動した様子なのです。図書館員のカードからの発信記録も別の場所でした」
       「それでは・・・」
       「生命反応を探査する機械を設置し、探査しています。ですが・・・がれきの中に混乱させる物質があるらしくて、探査困難な状況です」
       「明後日までに発見出来なければ・・・生命に危険が及ぶ事、ご理解下さい」
       「こんなところで、死なせてなるものかっ、冗談じゃないっ」
      不眠不休でがれきと格闘し続けた。


       「人の声がする。君・・・え」
      図書館員は自分を暖めようとしたまま、意識のない子供の身体に気付いた。それからもう一つ。脚の感覚がない。片足の。
       「失うのか・・・脚」
      呼び声が近付いて来る。
       「ここだ、誰か。早くしてくれ、子供がっ」
       「声が聞こえた、誰か手伝ってくれ」
      外から聞こえる声が誰かを呼んでいる。小さな穴が空き、そこから聞こえた人が目を覆うようにと伝えた。
       「今、昼間なんです。長い間暗闇にいたあなたの目には危険です。私は医者です、わかりますか」
       「はい」
      差し出された布で目を覆う。
       「手は出せますか」
      手を差しのばすとちくっと痛みが走った。
       「点滴です。クラッシュ症候群を回避するためのものです。今暫く頑張って下さい。子供は」
       「意識がないんです」
       「解りました」
      返事を返した彼は子供の頭に手をやった。暖かい。首筋に触れる。脈はある。息もしている。が、危険な事には変わりはない。
       「よし、掘り出せた・・・あ・・・、オーナー」
       「リシィ、リチャード、おい・・・」
       「目を覆って。暗闇に慣れすぎている」
       「解った」
      タオルで目を覆うとエドワードは小柄な弟の身体を抱き上げた。ぴくりと動く。
       「救急車両に」
       「解った」
      抱えたまま、走り、救急車両に運んだ。即座にカプセルに入れ、治療を開始する医療スタッフがいた。
       「・・・がれきが直撃か」
       「ええ。片足、感覚が」
       「仕方ありませんね、ここで切断します」
      医師の言葉に頷いた。麻酔を打たれ、切断。彼はそのまま、意識を失った。


       「切断って言いませんでしたか」
       「言いましたよ。でも、付け替えは簡単ですから」
      見れば両足揃っていた。溜息が出た。
       「あの子は」
       「無事です。お兄ちゃんに甘え放しですよ、これがまた・・・おかしいくらいに」
       「そうですか・・・良かった」
       「不思議な縁ですね・・・あなたは十四世紀からの移民でしたね」
       「ええ」
       「総裁閣下の部下だったお人か」
       「それが何か」
       「医療担当者だっただけです。あの御方も・・・白薔薇亭のオーナーも、あなたとともに助かった子供も」
       「そうでしたか」
       「その後の歴史は耳に入ってると思いますが」
       「はい」
       「ラングリーのエドマンド」
       「殿下の弟の」
       「その人の子孫です。あのオーナーもあの子供も」
       「子孫・・・」
       「あなたの子孫はあの二人を認めず・・・子供、本来は成人してますけれど、あの人を戦死させています」
       「私の子孫が戦死させた人が・・・」
       「時間移民とはそういう皮肉な運命に出くわします」
       「そうですか・・・」
       「検索すれば解りますよ」
       「それは今はどうでもいい、彼に会えますか」
       「はい、どうぞ」
      歩いてその子供の病室に行ってみた。



       「んで、また振られたの、みものー」
       「うるさいっ。なんで私が二股かけられて逃げられなきゃならんのだっ」
       「あー・・・そりゃ兄上、今じゃ国王陛下じゃなくておみくじ御殿のオーナーだし」
       「白薔薇亭だっ」
       「みんなおみくじ御殿って呼んでるよ」
       「・・・あいつがあんな料理ばかり作るから」
       「アンが跡継ぎたいんだって。料理長の」
       「そうしたらまともになるかな」
       「カエル捌いて殿下に食べさせた女に期待するんだ」
       「・・・うそ」
       「ホント、あ、どなた・・・」
      ドアのそばにいた男に気付いて少年が声をかけた。
       「図書館員ですよ、一緒にがれきに埋もれていた」
       「もういいんですか」
       「ええ・・・」
       「それは良かった」
      笑った。不思議な魅力のある笑顔だ。
       「殿下の部下って聞きましたけれど」
       「はい・・・」
       「殿下の。それは・・・ではトマス殿とも」
      エドワードがそう言った。
       「オックスフォード伯爵の位を持っていました」
       「え」
       「気に障りますか」
       「いいえ。あなたには他意はありません。まあ、今となってはヨークだろうとランカスターだろうと構うことはないですけれど」
       「ないですか・・・」
       「ないですよ。だって僕はリースですもん」
       「リシィ」
       「兄上は黙っていてよ」
       「そうだな、今は俺も唯の料亭旅館のオーナーだ。さて帰るか」
       「ごねないんだ」
       「料理長にごねられて三日続けて大凶だったんだぞ、冗談じゃないっ」
       「そら、お疲れさん」
       「大凶って・・・」
       「カエルのグリーンカレーとか」
       「ゲテモノ料理やなんですか」
       「半分くらいそうです」
       「ぜったい違うっっ」
      ドアの外でエドワードがそう叫んだ。リチャードが爆笑していた。
       「どうぞ」
      しめされた椅子に彼は腰を下ろした。
       「失礼しますね」
       「はい」
      不思議な巡り合わせ。だが、少年はこだわりはない。
       「びっくりしたでしょう、片足・・・」
       「ええ、まあ、まさかこんなに早く・・・」
       「あなたの細胞を使って作った義足ですから、義足とは言えませんけど・・・義足と言えば義足ですね」
       「すんなり動くし・・・」
       「でも、以前の傷とかそういう物は全て消えてますよ、赤ん坊の頃と同じものですから」
       「では・・・戦場でついた傷は」
       「ありません、そういうものです」
       「その説明は聞かなかったな・・・」
       「レイモンは不親切な医者ですよね、忙しすぎるのかも」
       「この世界は不思議が一杯だ」
       「来た事、後悔してますか」
       「・・・さあ、どうだろうか」
       「殿下にお会いになれば変わりますよ、きっと・・・よく兄の旅館に来ますから、トマス殿と一緒に」
       「トマスと・・・」
       「ただし、忠告しておきますね、お酒が弱い場合は・・・」
       「お酒が」
       「弱い場合は殿下がお好みの泡盛だけは召し上がらないで下さいね。どうなっても僕、保証しませんから」
       「は?」
       「まー、それだけは・・・くれぐれも」
       「・・・なんだかよく解りませんが」
       「どかんと強いんですよ、でも何故か殿下お気に入りで・・・」
       「はあ・・・」
       「図書館員ではもったいないんじゃないですか、殿下と行動したらいかがです」
       「それは・・・」
       「フランシーがいえ、殿下の旗艦の艦長が人手が足りないとぼやいてましたから、作戦本部の方に」
       「私が役立つとは思いませんが」
       「僕に丁寧な言葉使いは無用です。ここではただのガキですから」
       「エドマンド様の御子孫に無礼な真似は出来ません」
       「お堅いんですね、トマス殿から噂は聞いてますけど」
       「そうだ、お礼を言うために来たのに、失念しました」
       「僕こそ助かりました」
       「いえ」
       「一人で閉じ込められていたら諦めていたと思います。あなたがいてくれて良かった。もう一度兄上に言いたい事があるから」
       「言いたい事、ですか」
       「当たり前の事なんですよ、たいした事じゃない」
       「手を」
       「はい」
      差し出された少年の手はあの封じられた空間で触れてきたものと同じく小さく頼りないものだ。だが、この手が命を繋いでくれた。感謝する。
       「殿下にお会いになりますか」
       「そのうちに」
       「なら良かった。きっとあなたのこと知ったら、お待ちになりますよ、きっと」
       「トマスが」
       「トマス殿とは別の役割があなたにはあると思います。僕、ここに来てからたくさん色んな人と知り合いました。誰もがかけがいのない人達です。それが解るだけでも嬉しい」
       「それは・・・前では」
       「解らなかったと思います。でも生きるのに精一杯で何も考えられなかったのは事実ですから」
       「生きる、か」
       「今とあまり変わりないんですよ、僕は生まれつき弱くて小さい・・・騎士になれるような身体じゃなかった・・・時代が悪かったのかも知れない・・・けれど、戦って生きたことに後悔はしたくありません。ここでしたとしたら・・・兄上がきっと気にすると思いますから」
       「そうですか・・・」
      次に見た時は子供の様に兄に甘える姿だった。
       「だっこー」
       「いくつだ、おまえはー」
       「じゃあ、チェスしよーよ」
       「やだよ、おまえとやると負けるもん」
       「えー・・・」
       「他のなら」
       「双六とか、あっレイモンに教わった・・・」
       「やめんか」
      不透明なコップにさいころ二つ。
       「駄目だ、ろくなもん教えんな、あの馬鹿」
       「つまんない」
       「つまってろ」
       「だっこ」
      抱き上げると首にしがみついて、笑った。
       「兄上―」
       「なんだよー」
       「大好き」
      はっとした兄の顔を彼は忘れられなかった。なんて顔をするのか。
       「俺も好きだよ、リシィ」
       「うんっ、帰れて良かった、兄上にもう一度言おうと思ったんだー」
       「ああ、そうか、聞けて俺も嬉しいよ・・・」
      金色の髪に少し隠れた目が潤んでいた。彼はそっとその場から離れた。



       「もう一度調べてみよう・・・」
      調べて見た二人の兄弟の過酷な運命。兄を恨んだのか、解らない人。戦場で散った弟。その原因はどう見ても兄にある。
       「オックスフォード伯爵・・・」
      その弟王よりも十年上の子孫。ボズワース・・・。ランカスター派についたという子孫。そのため、家系は続いたという。ノーフォーク公爵の家柄はそのまま継続。首切り台に送られない先祖の家系は大した事はないと言われる歴史。
       「気にするなと言うのか、これを」
      そう思いながら病院に行ってみる。年老いた夫人の看護を彼は受けていた。その人を母と呼んでいた。
       「あ、オックスフォード伯」
       「爵位はいいですよ」
      果物が細かく刻まれ、器に盛られていた。
       「ヨーグルトにするわよ」
       「うん」
      手作りヨーグルトをかけて、少年に差し出す夫人はにっこりと笑って迎えてくれた。
       「どうぞ。あーリシィ、私はレイモンの話、聞いてくるわ、食べ終わったら休むのよ」
       「はい」
       「ごゅっくり」
      夫人が去っていく。
       「あの方が」
       「今の母です」
       「退院はいつ頃になりそうですか」
       「二月は無理ですね」
      彼は一瞬、言葉を失った。医学の発達したこの世界にありながら、病床にある、とは信じられなかった。
       「回復、いつも遅いんですよ、昔も一度熱出したら二週間はベッドでした」
       「聞きたいんですけど」
       「白薔薇亭の事ですか」
       「ええ、おみくじ御殿ってみんな言うんですけどねえ」
       「ああ、すごいんですよ、あそこの料理」
       「それ、殿下も」
       「いえ、トマス殿がみんな」
       「みんな、あいつが」
       「殿下の口に入る前に始末して胃腸薬の世話になってます」
       「はあ」
       「泡盛には気をつけて下さいね」
       「泡盛ですか」
       「行ってみれば解ります」
       「そんなものですか・・・」


      行ってみて・・・悶絶してそれから強い酒にひっくりかえり、その他もろもろ経験してから彼は大学側から出された休暇を利用して旅行に出かけることにした。口直しとも言うのか。それも小さな恩人のすすめだった。

      ボルドー。そこで出会ったのは・・・。


      白薔薇亭でも見かけるのは小さな弟を抱き上げてご機嫌で笑うオーナーの姿だ。そのうち眠ってしまった弟がしがみつくように抱きついている。
       「ユーカリの木みたい」
       「言うなよ、アルマジロだのコアラだの何なんだか」
       「だって・・・本当にユーカリにしがみつくコアラだわ」
      笑う女性は料理長の娘で・・・かの少年の妻だという。
       「愛してるわ、リシィ」
      そう囁いても小さな夫はオーナーにしがみついたまま寝ている。
       「休ませてきたら」
       「そーする・・・まったく」
       「兄上様、幸せそうよ」
       「そうかな」
      自信に満ちた顔でオーナーは笑っていた。ニライカナイのカクテルを彼は飲み、ベースがハブ酒と知って、顔を引きつらせていた。
       「殿下、なぜ、ここがお気に入りなんですか・・・ちょっと怖い・・・解らないでもないけれど・・・」
      兄にしがみついて眠っている小さなあの人の寝顔は幸せに満ちていた。


       「もう一言言うとしたら、これみんなに言うと引かれちゃうんですけどね、僕は立派な「裸の王様」だったんですよ」
       「それは童話の、ですね」
       「ええ」
      彼は微笑んだ。
       「リチャード三世陛下」
       「それは、あまり、その・・・」
       「そういうことを後々悟れる御方は決して愚か物ではございません。むしろ賢者と申すべき事です。お手を」
       「え」
       「失礼」
      小さな手をひき、押し頂いてから彼はキスをした。跪いて。
       「陛下、二度とその様な事、口になさらないように願います。兄王陛下も悲しまれます」
       「えっと・・・」
       「お願いいたします」
      ちらりと兄を見上げる顔。
       「リシィ」
      微笑んだ兄王の顔。
       「解りました・・・」
      騎士の挨拶。
       「あの・・・ここは身分制度はありません。二度とこの礼はなさらないで下さい」
       「はい、陛下」
      そう言うと彼は立ち上がった。
       「兄上、「裸の王様」の意味、解る?」
       「解る」
       「よかった・・・」
       「おまえ、また俺を馬鹿にしたな」
       「馬鹿にしても大好きだよ」
       「・・・こいつは・・・」
       「エドワード四世陛下」
       「何かな」
       「弟君には弱いのですね」
       「まあな」
      小柄な弟を抱き上げて金色の髪の王は笑っていた。

                       おわり。

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