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- リース家から届いた物をエドワードは整理していた。家族写真や映像、声の記録、大学での活動の記録。コピーしてリース氏が送ってくれた。三次元投影機に写し出した映像は学園祭で司会をしている姿だった。変装していたが。ルネサンスの頃のイタリアの女性のドレスを着て、楽しそうに笑っている。
「母上に似ている」
気付いた。音声のスイッチを入れてみた。現代の話し方で、しかも女性の話し方で案内を言っている。
「おまえ…そんなに楽しかったのか」
満面の笑顔。滅多に笑わなかったくせに、満面の笑顔でステージに立って、話し続けている。
「笑いたくなかったのか」
前の時代では。
「違うわよ」
エリザベスがいつの間にかやって来て言う。
「叔父様は…心許した人には笑っていたわ。ジョークも言っていたわ、私の事、何度も規格外れだって言って…笑ってたわ」
「ベシー」
「ダンスがへたくそすぎるので頭抱えていたわ、挨拶すれば裾踏んづけて転けそうになるのを抱き留めて支えて下さって、大笑いしていたわ…」
「おまえ…」
「なんで君が女の子なのかなって残念がってたわ」
「それは」
「…おかしなところでお父様に似ているのよ、たまらないわよ、まったく」
「ベシー」
「私が一番笑えた頃に…いつも叔父様はいたの…優しくて穏やかで…笑顔が素敵だったの」
「そうか」
「何度触れていたのかしら、と思うの」
「触れて…」
「キスよ、お父様、気になるかしら」
「何度キスしたか、か。数え切れないな」
「お父様は幸せね。私は三回きりだったわよ」
エリザベスは部屋を出て行った。
「三回って、何、それ、ちょっと待て。エリザベス、それは、何だーーっっっ」
「からかうなよ」
「事実だもん」
料理長が肩をすくめていた。
「姪としてのキスが一度、女にとしてのキスが二度よ」
「やれやれ…」
罪作りなことだ、と料理長は呟いた。