「こんどこそ」
銀時はそう誓って、手を握りしめる。原田と沖田、それに山崎が真面目な顔して後ろで囁き合っていた。
「坂田副長のこんどこそっていつなんだろー」
「ですねぃ」
「無駄なのにねえ」

聞こえているんだけど。銀時はそう思う。が、事実だ。もう一人の副長様、土方十四郎はこの手に関しては、はっきり言って「天然」ちゃんだ。そりゃもう残酷なくらいの「天然」ぶりを発揮して・・・、坂田銀時がしがない「万事屋」の取締役社長だった頃から、銀時は泣きを見てきた。すかしぷりはそれはもう・・・桂にもあの高杉にも哀れまれるほどの・・・ものだった。特に高杉はそのことで必ずからかいの一筆啓上をしてくれるので、それこそ泣きたいくらいだった。しかも、腹立つことに今も、それをしてくれる。脱力するよーな文章で、お手紙が来るのだ。
「おい、銀時、やぎさん郵便、また来ているぞ」
出だしにこの童謡を達筆な、行書体の文字で書き付けた上、その後どうした、聞かせろ、と来るのだから質が悪い。
「あんのヤロウ・・・今度会ったら絶対ぶっ殺す」
相手は過激派攘夷志士だから、それはいいのだが。
「どこでどう聞かせろって言うのさーーーっ」
「また来たのか、銀時」
原因君こと十四郎の言葉に銀時は詰まる。
「うん」
返事はする。どこで投函されたものか調べるのだが、いつも場所は一定されていない。しろやぎさんとくろやぎさんねえ。くっくっと土方までもが笑う。
「笑い事じゃねえっての」
「じゃなんで、その後どうした、聞かせろ、なんだ」
「・・・う」
説明できない。不器用な恋愛模様がよりによって桂にも高杉にもばれているなんて。
「いいんだよ、やぎさん郵便なんだから。返事あるなんて思ってねえよ、奴も」
「まさかと思うが」
「うん、何よ」
「おまえ、何か言ったのか、連中に」
「言わねえけど、ばれたの」
「ほー、そうか。そういうことか。俺は別に痛くもかゆくもねえが、なんでおまえはおかしくなっているんだよ」
やっぱり天然だった・・・。涙こらえて銀時は子供が書き初めに使う大きな半紙にでっかく、書いた。

「こんどこそ、見ていろよ、くろやぎさんへお手紙書いた・・・くろやぎさんたら読まずに食べた」と。そして、それを・・・万事屋の玄関先に張り出しておいた。


「無理だろ、あの馬鹿は」
くっくっ笑って高杉は大きな半紙を丁寧に玄関先からはがすと持ち去った。




「てめえにこんどこそはねーよ、しろやぎさんたら読まずに食べた」

そんな手紙が届き、銀時は、また泣いた。十四郎は仕方なく、高杉宛に「こんな馬鹿からかうのやめておけ。見ているのはおもしろいけれどな」と書き添えてやった。高杉晋助が・・・どんな反応をしたのか、知っているものは坂本くらいしかいない。

「けったいなもんじゃのう・・・あの金時が」
「銀時と呼ばねえと、またぶっ飛ばされるぞ、辰馬」
そして、また書いている、くろやぎさん・・・と。

無限回廊ですか、銀時、晋助。