全長170センチのテディベアは実在します。近所の今は倉庫になっている店舗内に。シベリア帰りのおじーちゃん社長がおもしろそーとか言って、買ってしまったものです。直径二メートルの消防暑払い下げのホースリールの上にちょこんと、どころかどかんと座ってます。リボンの幅は30センチちかくあり、腕一本でふつーのテディベアが一体できちゃいそうです。「こんなもんどーするんですか」と聞いたら、おもしろそーだから買ってみたけど想像以上にでかかった、とのこと。そのときそばにいた女性従業員に同じメーカーのばかでかぬいぐるみもう買っちゃ駄目ですよ、と釘さされていた。言われなければ、買う気満々だったらしい・・・。え、駄目なの・・・とか言ってた。置き場所どうするんですか・・とか。
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大げさなジュゲーム...12
- テディベア
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「いい加減にしやがれ、失せろ、このくそ天パー」
どかっ。銀髪の天然パーマの副長様は今日も蹴り出されていた。
「ひっどーい。たまには優しくしてよーーー」
「してたまるかっ、ドスケベっ」
どげころころと銀髪の以下略・・・は廊下に転がっていた。
「またかよ、諦めて自室で寝ろよ、銀時」
うるさくて寝られなかったらしい近藤が蹴り出されて、廊下に転がる銀時をそう言って眺め下ろしていた。
「…ごめん」
「まーいいけどさ。他の連中は真夜中のお笑い劇場って呼ばれているの、知っているか、おまえ」
「初めて聞いた…」
「ほら、よ。大事な赤ベコだ」
近藤は赤ベコを渡すと自室に入ってしまった。
結局、また赤ベコなのね…。くすん。
で、その年の銀時の誕生日プレゼントはテディベアだった。
「土方君、あのね」
「ないよりゃいいだろ」
相変わらず、外れた男だ。しかも無駄にでかい。
「それ、シユタイなんとか製の特注品だぞ」
「…え」
「どうかしたか」
いいえ、どーもしません。六畳一間の副長の個室に全長百七十センチの特大テディベアは、ちょっと…。布団敷く場所にさえ苦悩しそうな…。首に巻かれたど派手なドピンクのリボンの幅は三十センチ近くある。
「並サイズのリボン何本とれるんだろ、これ…」
ついそんなことを思ってしまう。そのリボンには坂田銀時くんへ、愛を込めてなんて刺繍が入っていた。下手に捨てられない。このリボンだけで十分だあああと銀時は叫んでいた。始末に負えない贈り物をするのが趣味なのか、あの男は。でも、愛しいのよ、困ったものだ。お返しはいつも、おまえが作る手料理がいい、だけ。
「どっちが重いのかしらん、このシーソー」
「そりゃ旦那、旦那のほーが重たいんじゃねえんですかぃ」
可愛くない部下その一こと沖田はそう言って笑った。時々焼き餅をやくこの部下は…得体が知れないが、どーやら銀時にご執心らしい。隊士に言わせると滅多に見られない極上の微笑みを銀時にだけ見せているのだから。沖田に執着している神楽はそれがおもしろくない。なので…。
「ぎやあああ、屯所が壊れるーーー、銀時、トシー止めてぇぇぇ」
なんていう近藤の悲鳴を聞く羽目にもなる。
「クマちゃん、あの二人を止めて」
無理。全長百七十センチのクマは動かない。抱きついていたら、というか、正確に抱きついていたのは、クマの腕だけど、土方にどつかれた。
「動け、働け、この天パー。お義父様にちくったろか」
「それはいや」
義理のパパこと松平長官は何を言い出すか解ったものじゃない。隠し子の催促は相変わらずしてくるし。
「ねえ、俺の家系とあのおっさんの家系、関係あったのかねー」
「ないのか」
「わかんね」
坂田の名字だって適当につけたはずだ、と銀時は思っているが。
「とっつあんの資料によるとー京の都の近郊に坂田の郡とかいう里があって、そこの本家に銀髪の子供が生まれて…その母親ってのがとっつあんの家の、承認されてなかった姫だったとか」
「へ」
「とっつあん本人も婿養子だぜ、あそこは。だから栗子ちゃんの母上とおまえの母親に血縁があるんだよというでまかせなら聞いた事がある」
「でまかせ、かよ」
「おまえの母親云々はでっちあげだとか言ってた気がする」
「何、それ、それで良く家に入れたじゃん」
「あのおっさんがむちゃくちゃなのは知ってるだろーが」
「知ってるけどさあ…」
何それ。それで、俺、指名手配解除なの、あのおっさん何考えてんの。。。
「吉田とか言う学者を幕府が処断したときは、あのおっさん、父親に回し蹴り入れて、座敷牢に閉じ込められたんだとよ、もっとも、脱獄したらしーが」
「脱獄ね」
「間に合わなかったんだとよ、相当悔やんだらしいぜ」
警察長官が脱獄して謀反の疑いのある罪人逃がそうとした過去があるとはねー。
「そんくらいはやるだろーよ、あのおっさんのことだから」
「それってヅラは知ってんのかな」
「さてな。それは知らん」
知っていたら、どーなのかなーとは思うが。事件が起きて、出動して。土方に蹴り出されてどでかいクマの腕に抱きついて愚痴をこぼして。銀髪の副長の部屋は沖田隊長の部屋と同じくらい不気味だと平隊士に言われていることなど、銀時は知らない。知っていたとしても、構わない。