「緊急連絡、緊急連絡」
食堂で味覚崩壊している二人の副局長が平和に朝食を採っている時に、その放送は鳴り響いた。
「人質立てこもり事件発生、場所は・・・」
隊士も副長も隊長も全員、食堂からかけだしていた。
「留守番は六番隊、十一番、ただし、隊長と副官はのぞく、観察も現場直行せよ」
土方はそう怒鳴った。
「了解」
「隊長と副官はのぞくって何アルか」
「チャイナ、おまえと定春は出動って事だよ」
土方の言葉に神楽はきょとんとしていた。
「言っただろーが、十一番隊の隊長はおまえで、副官は定春だって」
「りょーかい」
そういう待遇なのね、あっそう、などと銀時は呟く。
「天パー、おまえも出るんだよ、何ぼっさりしてやがるんだ」
「土方君、ひどい」
「うるせえ、とにかく来いっ」
首根っこ捕まえて、土方は銀時をパトカーに叩き込んだ。
「うげっ」
指揮系統を統べる特殊なパトカーのハンドルを土方が握っている。助手席に銀時、後部座席に近藤、沖田。
「チャイナは」
「あー、定春とだろ」
沖田の質問に銀時が答えた。そのパトカーの横を定春が走る。背中に神楽を乗せて。
「あー納得」
どうでもいいが、土方の運転は、はっきり言って荒い。
「現場着く前に酔っちまいそう」
近藤も沖田も慣れているらしく、平然としていた。が、銀時はそうはいかない。
「慣れろ」
だろな。がっくり。


「状況を知らせろ」
土方は刀片手にいち早く現場に到着していたパトロール任務に当たっていた三番隊の隊長に聞いた。
「人質の人数は五十名、女子供が三十名、これはこのホテルの宿泊客で、従業員は含まれていません。立てこもり犯は天狗党の模様」
「そうか・・・」
その報告に銀時の顔がきつくなる。神楽も到着した。
「チャイナ、おまえと総悟は地下から潜入しろ、ダクトシュートから入れ。子供らだけでも、助け出せ。出来るな」
こくん、と神楽が頷く。
「土方さん」
「おまえら二人なら抜けられるが、他の隊士らはちとでかいからな」
「了解」
二人が駆け出す。
「銀時、補佐しろよ、あの二人」
「げ」
「出来るだろ、おまえなら」
「わあったよ」
木刀片手に銀時はホテルの正面から入っていった。強行突破か、とマスコミが色めきだつ。が、銀時ただ一人だけだ。ぽかんとする連中を尻目に、土方が笑った。
「そろそろだな」
土方のイヤホンに女性と子供だけは助け出したという沖田からの連絡が入った。人質監視役のテロリストを片付けての、事らしい。
「土方さん、まずいですぜ、男性客と男性従業員は別のところにいやしたぜ」
その沖田の声に土方が返事をした。
「糖分の副長が行った、奴がなんとかする」
「それならわかりやした、そっちに馬鹿ども、誘導しやすぜ」
「頼んだぞ」
連絡を終わって土方はマスコミに下がるように告げた。
「なぜ」
「いいから下がれ、死にたいか」
その言葉にマスコミも野次馬も下がった。
「一番隊、十番隊、連中が出てくる、とっつかまえろ」
「了解」
土方は刀片手にその場を離れた。
「トシ」
「銀時、手伝って来る。後は頼む」
「わかった」
指令車のそばで近藤が指揮を執る。
「一匹たりとも逃がすなよ」
おーっと言う声。ホテル正面から飛び出てきた浪士達を隊士らは迎え撃った。


「大串君、しどい、こんなに大変なの、銀さんに任せてどーいうのよ」
「やかましいわ、終わったらサービスしてやるからきびきび働けえ」
「まったくもおお」
人質を逃がしながら銀時は木刀を振るった。
「おまえが大将か、おい」
にらみつけた浪士に土方が声をかけた。
「そうだ」
「よくも楽しい食事時を邪魔してくれたなあ、覚えていろよ」
えーっと。
「厄介な事してくれてよ、お仕事増やされて俺は気がたってんだ、覚えていやがれ」
銀時は奇妙な啖呵に唖然としていた。
「おい、元万事屋、何、ぼけっとしてんだ、サービスいらねえのか」
「いりまーす」
ぱっこーんっ。


残党もすべて捕らえ、土方は煙草をホテルの外で吸った。
「サービスって何」
「さあて、何だろうな」
くすくすと土方が笑う。銀時はなぜか怪訝な顔をした。
「銀ちゃん」
神楽が定春の背に乗ったまま、聞いた。
「チャイナ」
「ん」
「お疲れさん。飯食い終わってたのか、おまえは」
「ううん、途中だったアルよ」
「そりゃ馬鹿どもは気の毒したな」
負傷者多数の浪士達。
「でも、総悟と楽しかったアルよ」
「だろーな」
「出来れば一緒がいい」
「隊長二人にすっか」
「いいの」
「ああ、その方が面倒が少ない」
「ふうん。トシちゃんがいいなら、私はいいアルよ」
「頼んだぞ」
「うん」
土方に頭撫でられて神楽はご機嫌だ。それを沖田が変な顔をして見ていた。
「総悟、どうした」
「何でもねえです」
くすっと山崎が笑ったが、誰も気づかない。その横にいた新八以外は。

サービス。しようと思ったが。

訪ねた部屋の布団の上にいたのは愛しの土方十四郎ではなく、金色のさるぼぼだった。ご多分に漏れずかなりでかい。

またかよーーーっと銀時はむなしい叫び声を上げるのだった。さるぼぼの前に「報告書と始末書書き上げるまで、これでもだっこして待っていろ」と達筆な土方のメモがひらりんちょと置いてあったのであった。チーン・・・。