「いい加減、その阿呆なノート捨てろーっ」
どんがらがっしゃんと賑やかなダブル副長のやりとりを隊士らは、それを背景にずずーっとお茶をすすっていた。
「今日も平和だなー、なあ、総悟」
「そうですねぃ、近藤さん」
ひよいっと飛んでくる土方と銀時が投げたであろう物体を沖田はよけた。近藤も、山崎も、ヒラ隊士らもよけたり、たまにぶち当たったりしながら、ティータイムを過ごしていた。
「壊すなよー、おまえらー」
近藤の声に、二人そろって「おうっ」と返事するが、わかったものじゃない。重要なものはとっくにしまってある。始まるな、と予感したときから、しまうのは癖になってしまった。さすがの沖田も。
「よく飽きないもんすね、近藤さん」
「ほっとけ、あいつらはアレがいちゃいちゃみてえなもんだから」
「へー・・・」
「出かけてもいいか、総悟」
「やめておいた方がいいと思いやす、近藤さん」
どんがらがっしゃーんっ。
「そうだな」
どこの壁をぶち破ったのか、派手な音がした。
「責任取らせるとすっか」
近藤が立ち上がって、二人に声をかけた。「二人で直せ」と。想像出来るのは渋々、嫌々ながら、局長の仰せに従っている二人の姿だ。

「てめえのせいだ」
「いや、おまえが悪い」
そう罵り合いながら、大工道具を取り出し、直し始めるのもいつもの事。

が。

「なんで、捨てろって言うのさー」
そんなマジな顔で言うな、と土方は思った。二人きりになった時、土方に言われたのだ、阿呆なノートを捨てろと。
「実は五冊あるんだけど・・・」
「おまえは馬鹿かーっ」
「馬鹿じゃないもんっ」


「またやってら、飽きねえなあ」
原田は夜勤だ。可哀想な隊士らのためにも、仕方ない。そして、今は真夜中だ。
「痴話喧嘩ならよそでやってくんない?」
寝不足でブチ切れた永倉たちにぽいぽいっとダブル副長は屯所からたたき出された。夜道で言い争いながら、私宅へ向かっているらしい。


「何がそんなに不安なんだ」
土方の言葉に銀時は歩みを止めた。
「解ってんだ」
「ああ」
「明日がわかんないなら、取っておこうと思っただけだよ、昔は取っておけなかったから」
「早々、俺は消えねえよ」
「うん」
「だいたい同じ職場じゃねえか」
「そうなんだけどさ・・・」
でも、まだ、抜けないんだよ、おかしな感情が。寂しいと、言っていいような悪いような曖昧な感覚。それを土方にぶつけていいものか。
「職場できしょいノート広げてやに下がっているおまえの面はちょっと拝みたくねえんだけどな」
「えへへへ」
でもさあ、ひとつひとつが俺には大事なんだよ、と銀時は笑う。饅頭の包み紙、初めて奢ってもらった団子の串、ケーキの包み紙、一緒に飲みに行った居酒屋の箸袋。そのひとつひとつに土方の、妙な行動、言葉が思い出されて、おかしいのだから、仕方ない。それが解るから、捨てろと言っても、土方は自分からその気色悪いノートを銀時から取り上げて捨てる事までは出来なかった。それがいつもの二人の暮らしなのだから、仕方ない。

「言っておくが、今は自分で払えるだろが、誕生日とか特別な日以外は、飯代ぐらいてめーで払え」
と付け加えるのは、忘れなかった土方であった。