08. カテドラル


(カジモドの拘り〜星の流れに〜番外編)



 「真選組局長の処刑だとさ」
刑場で立ちつくす女の前で誰かがそう言う。局長、副長が引き出され、その横に一番隊隊長の姿。
 「局長と副長はこれだってさ」
首を切るジェスチャー。
 「じゃ、あれは」
 「あれは未成年につき、罪が減じられ、生きたまま、さらされるんだとよ」
ああ、と女は溜息をつく。同じ年だった。彼とは。彼女を見て、近藤勲が微笑んだ。
 「お妙さんは幸せになってくださいね」
そう言った。幸せに・・・。幸せって何? 
 「え…」
生きろと、ただ一人処刑を免れた少年に二人が告げる。嫌だ、という声。妙は堪えきれず、刑場を後にした。




 「ねえ、新ちゃん」
買い物を頼む。わざとややこしいものを念入りに。
 「あ、はい」
何も知らない弟は素直に出ていった。母親の残した嫁入り衣装を着込み、道場に座る。真っ白い打掛に綿帽子。そして、隠し持っていたあの人の写真。
 「今、参りますね」
そう言って微笑んだ。懐剣を取りだし、彼女はもう一度、微笑んだ。




街中。
 「あ、新八くん」
山崎という隊士。
 「お姉さん、大丈夫ですか」
 「え」
山崎が顔面蒼白になった。
 「戻りましょう、万事屋の旦那を呼んで。嫌な予感がする」
 「でも買い物が、姉上に」
 「いいからっ」
山崎は携帯を使って銀時を呼び出した。
 「志村の家に」
 「何ですか、いったい」
 「今日なんだよ、近藤さん」
 「あ」
気付いて、走り出す。



 「姉上っ」
家の中にはいない。
 「道場は」
 「鍵がかかってる…中から」
 「どいて」
体当たりで山崎が扉を壊した。
 「しまった…」
白い花嫁衣装、床に広がる赤い血。駆け寄って脈を確かめた山崎は首を振った。
 「姉上っ、なんでっ…」
整えられた祭壇の上に手紙。
 「失礼します」
山崎がそれを取る。
 「気付かなかったですよ、姐さん、俺たちはちっとも。てっきり、大嫌いなんだとばかり…」
その言葉に祭壇を見ると近藤の写真。笑顔の写真が飾ってあった。
 「こんな写真、いつの間に…」



新八さんへ

私はあの人のところにあの世にストーキングしにいきます。
私のことは嫁いだものと思ってね。あの人の妻と思っていてくださいね。

                   妙より




 「それが、近藤勲室・妙ってわけですかい?」
三年後、総悟が銀時に聞いた。前には質素な墓が二基あった。
 「おうよ、局長さんのは、坂本のドアホが建てていったわ」
 「姐さんのは」
 「新八が…な」
 「そんな気配、感じませんでしたぜぃ」
 「そりゃあんた…」
女物の上品とは言えない着物に薄絹。夜のものに身を落とした総悟は黙って墓を見つめていた。
 「ところで、多串くんのことは聞かねえの」
 「武州ですか、旦那」
 「ああ、行ってみたら驚いたぜ、いつの間に奥方様がおいでになったつーかね」
 「すいやせん、旦那」
 「あんたもわかんねーな」
 「ふふ、あの世でしか一緒になれねーなんて、馬鹿ですねぃ」
 「そうだな…」




モンフォコンのハゲワシよ、この身を食らえ
そして この血をすすれ、
あの世の向こうのそのまた向こう
二人が人々の記憶に残るように
時を越えて…

踊れ わがエスメラルダ、
歌え 我がエスメラルダ
そなたのための死は死ではない…