「え、新しい天人が来るって、和平使節としてって…その警護って、別に一番隊じゃなくても」
「ちがーう、おまえ、指名なんだよ、とにかく命令書渡したからなっ」
ばびゅんっ。土方、逃走。近藤が溜息をついた。
「予算倍増の為に堪えてくれ、総悟、じゃあな、ちょっと出かけてくる」
近藤も逃走、いやストーキングに出かけた。
「ええーっ、なんじゃあああ、こりゃあああっ」
衣装指定なんて聞いてねえぞ、くそっ。と思ったが、八つ当たりしようときょろと周りを見渡せば。誰もいなかった。指定の衣装だけ、置いてある。溜息ついて、トランクをひろげれば。もっと溜息が出た。渋々取り出すと、真っ黒い制服にどこか似ているミニスカートにブラウス、白い靴下にパンプス、それに何か解らないが、不思議な棒。スイッチを知らずに持って、いきなり飛び出した光りに驚く。
「光りの劔かよ、これ」
白いベルトにはその劔をぶら下げる金具がついていた。ばかりか、刀も付けられる様になっている。
「なんなんだ、これ」
もっとあされば。キャミソールにレースの付いた下穿き、黒いタイツ…。それに二重になったカチューシャ。茶色いエクステンション。
「…わけわかんねえ」
とりあえず命令書を見ると。この衣装をつけて仲間の振りをして警護に入るように。…。…。
「いつかぶち殺す…土方め」
命令は命令。渋々、身に付けてみると…サイズはぴったり。落ち込んできた…。
「ええーっ、っていうけど、どなた」
万事屋の言葉にへこみはますます。
「わかんねえ、旦那」
くるりと一回転して、髪を押さえて微笑んで。
「うそ、沖田君?」
「うん、そう」
アンドロイドに見えるように目にも変光性能付きのコンタクトレンズを入れていた。
「脚、思ったよりほっせえー」
「それはいいから。旦那ぁ、ちょっとたのまれてくんないかなぁ」
と銀時の手に手を絡ませた。
「金額によりまーすっ」
「それは心配ない。さっき振り込んでおいたから」
「ちっ」
「明日、ステーションにきてくんねぇかな、方法はどうでもいい、カーマントーのジャヤデルマン大使の警護に俺、ついてるんだけど、多分…うちの隊士、あてになんねーんだ」
「なんで」
「この格好で、道場で組み手やったら鼻血だしちまってさあ」
スカートの中身見えちまったのが問題なのかなあ…とか呟いているが。
「銀さんだって枯れちゃいねえわよ」
「いざって言うときは平気だろ、旦那は。サービスするからさ、後で」
「う、うん、まあいいけどね」
何のサービスなんだか。ねえ。
「来たか、やはりな」
それは過激派テロリスト様ご一行。愛用の刀はやはり身に付けていた。鯉口を切り、一閃する刀。
「おおーっホンモノみたいだー」
大使はそう言って感心していた。なにがホンモノなんだろう。まあ、いいか、とりあえずはこのテロリストどもを血祭りに上げてからだ。…。…。
びゅんと白刃がなり、血糊を飛ばし、鞘に収める。銀時はその様子に溜息をついた。
「練習したのね、そのヒール」
「あったりめーじゃん」
大使が突然言い出した。
「お願いがあるのですが」
「何でしょうか」
「マスターって言ってみてくれません?」
異星人さんの言葉に悪寒。総悟はちらりと隣の万事屋を見上げた。万事屋、すんげえええ悪寒マスターという台詞を請われた総悟の推定四十倍の、悪寒。
「私と、この剣をどうぞお取りください、マスター」←これ、決まり文句みたいなもん。アレでは。
総悟はにんまりと笑って銀時に菊一文字を捧げ持って告げた。ついでに上にあったカチューシャを取り去って。
ちゅどーんっ。それはどういう意味だあああっ。
「やっぱり駄目か…似ていたのになあ」
この大使の本当の名前は…デ・・何とかの星のなんとかという騎士団の一員ではないかと…。実はさらっていこうという計画があったらしいとか。笑。
「ところで、どこで知ったの、総悟くん」
銀時がそう聞いた。
「実は命令書に書かれてあったんでぃ、マスターという台詞、口にしてはならず、ってさ。もしも頼まれても、適当な人間を捕まえて言うべし、ってな」
「あっそ…」
「調度よかった、旦那、いてくれて」
胸の前で両手組んで可愛らしく、首をかたむけて。わざと。どーみても女の子に見えるけど。
「あっそ…」
この悪魔め。
「あーあとであのくそ副長やりこめるのにも力かしてくんねぇかなぁ」
「どうやって」
「それはいろいろと、マスター」
にっこり。凶悪な笑顔に銀時は不幸な副長さんにそれはそれは深く同情していた。
おわり