エリザベス、銀の時代


 「聞いてくれんか、銀時」
 「依頼ならな、ほれ、金よこせ、ヅラ」
また家賃と食費で苦しんでいる万事屋の主はかつての盟友、桂小太郎にもそういう。
 「ヅラじゃない桂だ」
 「でーなんなんよ」
 「それがな・・・エリザベスがな・・・」
あのペンギンお化けがなんだっていうのさ、コノヤロー。けれど。銀時は・・・桂が持ってきた大福にもう食らいついていたのであって・・・。
 「ある漫画というものに入れあげてしまって、だな・・・」
これなんだが、知らぬか、ときたものだ。


 「黒執事」


ゴシックロマンあふれる文字で飾られ、見目麗しい男が燕尾服を着ている絵が添えられた漫画本だ。


 「これがなんだって・・・」
 「どこをどうやったのか、全巻そろえて毎日読みふけるという有様で・・・」
 「へ」
 「それがだな・・・」
もごもごと桂は言いにくそうにしていた。そして。あのペンギンお化けが万事屋にやってきた・・・。


 「エリザベス」
桂がそう呼ぶと・・・
 「やだ、リジーって呼んで♡」
なんて書かれた看板がすっと上がる。


・・・。・・・。・・・。

 「やーん、エリザベスなんていつまでも他人行儀」
そんな看板もある・・・。

 「ちょっ、やめてくんない、顔面偏差値、びみょーなラインの女子に告白されたみたいなこの変な感じ、なんかやだあああっ」
 「銀時、銀時、気をしっかり持て。これを毎日なんだぞ、俺は」
 「こんなお馬鹿な依頼は高杉か真選組にしてよっ、俺はやだあああっ」
 「高杉にはしたんだ、けちょんけちょんにされたどころか、黒執事ごっこ、ふたりでやり始めたんだぞ、俺の前でっ・・・」
涙目だ。しかも燕尾服とペンギンがなんか似ているとか言って、執事はペンギンおば、じゃなくてエリザベスのほうなんだぞ、と。

 「で、真選組は」
 「沖田と始めた・・・土方がぶっちんと切れてしまって・・・」
そりゃまあ、沖田君は土方君いじるのが趣味だからなあ・・・。
 「踊らないか、エリザベスなんて・・・言って・・・ワルツをだな・・・」
あっそ。それで?
 「ご機嫌よく踊ってたんだ、エリザベスも・・・」
 「あんた見てたの」
プルプルと桂は首を振った。
 「見ていたくなかったが、屋根の上で見てた・・・俺のエリザベスがあああ」
 「リジーって呼んで」看板がすちゃっとあがる。
 「おまえが諦めればいいじゃんか」
はっと桂が気づく。
 「そうか、そうだな、ありがとう、銀時、帰るぞ、エリザベス」
 「だからリジーって呼んで。いつまで他人行儀なの、あなたって」と看板。


リジーって。リジーって・・・。



でも、バルカン砲の射撃をまともに食らったよーな破壊力を伴った・・・「リジーって呼んで」と書かれた看板を持って迫りまくるペンギンお化けの姿は・・・いつも必ず、ずっーーーと見られ続けたのであった。ハイ。どこでも、かしこでも。


 「やっぱり俺は・・・ベスが精一杯だ・・・」
 「やーねー、リジーって呼んでって言ってるでしょ」という看板がペンギンお化けの手によってぬううううと上がるのであった。








某A様原案、「黒執事」にすってんころりんしたエリザベスのお話でした。


ちょっとまったあああ、タイトルに俺の名前がさりげなく入ってるってどういうこったあああっ・・・バイ、坂田銀時。




銀の・・はある映画のタイトルの・・・わははは。