04. 光・一千万年その4
…。ドラゴンとの会話を聞いていた部下に価する人間は絶句していた。
「忘れろ、全速力で忘れろっ」
土方の無茶な命令。が。
「…会話できるとは思ってみませんでした、ドクター」
だから忘れろって。
「あ、消えた」
ファティマの言葉。
「へー。あれって会話、ふつー」
「した人間なぞ、知りませんよ」
「ああ、そう…」
なんと言ったらいいのか。三人は顔を見合わせた。
「で、でもご命令ならば、忘れますっ」
どの世界にも山崎みたいなのはいるもんだな、と土方は思った。
「そーして」
思考回路が似ている人間を出来るだけ選んだらしいが。何か不安になる、自分らの世界にいる、この世界の住人が。
「でも、閣下はいつものらりくらりしてらっしゃいますから、たいしたことはないでしょうね」
「へ」
ぱちくり。
「たまには真面目にやれ、とよくレイバック殿にもご忠告頂いておられるし」
「あっそ…」
真面目な騎士じゃなかったのね。
「まあ、いざとなればしゃんとなさいますから、私は案じてはおりませんから」
訂正。こいつはジミーじゃなくて新八だ。三人はそう思った。では、失礼致します、と去っていってくれた。
「なんか、旦那ってば」
「みたいだな」
「でードクターはやはし…」
「うるせーよ」
ドクターとこの騎士は口げんかがものすごいらしい。
「なんつーか」
流石の沖田総悟も不安になってきた。
「失せろってんだ、このやろー」
ああ、始まった…。父様とマスターはどうしてこー仲がお悪いのかしら。
「やるかー」
って。止めた方がいいのかしら。
「あ、沖田さん。こんなの放っておいて、昼飯にしないと食いはぐれますよ」
山崎の言葉に笑う。
「そうだねぃ」
何日かいて、解った事。なので。山崎という気のいい男とお昼ご飯にしてみた。
「よると触ると一体」
「似たもの同士なんですよ、ほっとけばいいんです」
山崎はデザートのチョコムースをくれた。
「ああ、そういえば、似てる」
「でしょ」
この男はパシリにこき使っているらしいが、蜜には出来ない。ファティマの不文律が染みついていた。人間の、男の子の身体なのに。でもまー、沖田という少年のやらかす通りに動けばいいだろう、そう思った。
だから。捕り物にも出かけた。素手でもやれるけれど、一応刀を使った。返り血ひとつ浴びない。刀は長身だったが、そんなに重くはなかった。
「す、済んだか」
「へい」
「後始末しろ」
土方になっているドクターは精一杯我慢しているらしい。帰り間際に銀時がいた。これが、ファティマ・蜜のマスターだ。
「変わりねーってことか」
つきあえ、と銀時が示す。総悟が頷く。
「止めないんですか、副長」
「ほっとけ」
ほんとは違うんだろうけれど。そう思うけれど、蜜の精神はマスターが必要なのだろう。
「出撃ね」
「そーゆーこと」
「まさかりにしやすか、マスター」
「金太郎から離れてよっ、沖田くん」
「だって…」
新品のモーターヘッドをテストしろと渡されて。その顔のまわりの装甲を見た総悟はずっとこの調子。
「どーみてもおかっぱにしか見えねえんですもん」
「だろーなー」
がっくり。
「顔が熊じゃなくてよかったですねぃ、旦那」
「ご冗談でしょ」
「やっちまえーーーっ」
ぶんまわすまさかり。
「まさかり担いだ金太郎、熊にまたがりお馬の稽古、はいしどうどう…」
音痴な童謡を思わず歌ってしまう土方がいた。
「いいのかねえ。しかしほんとに本気でまっこと見事なおかっぱ…」
吹き出しそうなのを必死で堪える。戻ってきたら、この騎士らはどうするのだろう。そして、戻りは突然やってきた。