被写界深度(ひしゃかいしんど)
被写界深度(ひしゃかいしんど)とは
ピントを合わせた被写体の前後で、肉眼でピントが合っている写る範囲。


カシャ。携帯のカメラのシャッター音。確かに聞いた。確かに確かに聞いた。けれど。


猫の祟りで猫になって、やっと戻ったというのに。なんなの、なんの仕打ちなのよ、一体。

 「あ、旦那、沖田さんの部屋に入るのならくれぐれも気をつけて」
ジミー君の一言。ここは真選組屯所、沖田君の部屋の前。
 「え」
でもなーんもなかったのよ。
 「あれ、なんもない…よかったですね、旦那」
にこにことジミー君は去っていく。けれど。まさかまさか…こんなことになるなんて。
 「どーしたんですかぃ、旦那」
壁にでっかく貼り付けてあるポスターは。見たくもないあのときの…。
 「旦那ぁ、この猫、この猫が欲しいんでさぁ、探してきてくだせえよ。近藤さんには見付けられたら飼ってもいいって許可もらいやしたんでさぁ」
 「……むりだとおもうけど」
やっとそう言った。俺。何、俺に押しつけてんのよ、あのバカゴリラ。ぐるるる。
 「旦那ぁ、ねえ、どうしたんですかい、さっきからうずくまっちゃって…」
 「なんで、このぶっさいくな猫がいいのよおっ」
 「えー…だって旦那に似ているしー…」
ぽっと頬染めて言うなんて。
 「そりゃどーも。でもね…」
ああああ。呪いは祟りはまだ続いてるんじゃん。やだよ、もー。
 「あーあ、とうとうてめえにまで言い出したか」
鬼の副長がそう言った。
 「どういうことよ」
 「総悟はな、ぶっさいくな猫が好きなんだよ」
 「…あっそ」
 「そういうマニアいるだろ、ドー見ても、かわいげのない、そうそう、このポスターみてえな…」
 「ほーそー…なの」
 「たまにゃいるんだよな、こういうぶっさいくな毛玉猫が好きな奴。そういうサイトもあるって話で、この間そこにこいつ、投稿したら、五十万単位の値段ついたらしいぜ」
う、嬉しくない。人間でついたら嬉しいかもしんないけど、こんな猫の姿で…。
 「写真だけで、その値段ですぜ、ホンモノが飼えたら、俺うれしいんだけどなぁ」
ふにやーーーん。どうしよう…。
 「一生大事にするって近藤さんにも…」
 「…なんか複雑」
やっぱり祟りだ。愛しいこの子に。こんな好かれ方されても嬉しくない。。。しかし、でっかいポスターだなあ、おい。
 「ところで、総悟」
 「やべ」
 「おまえ、また組のパソコンで変なことしやがったなぁぁぁっ」


画像処理、真選組のパソコンでやったのね…。携帯の画素数、いくらだったのよ…。まったく…。しみじみ見ても不細工だわ、これ。これが可愛いなんて…俺、よくわかんねーわ。

ニコチンマヨとの追いかけっこがすんだ沖田君に事情話したら、真っ赤になって固まってしまった。
 「もう一度猫になってみてくだせえ」
 「無理―っっっっっ」
どういう教育したんだぁぁぁ、ゴリラ、ニコチンマヨ。


                     おわり